Glossary

中小M&A用語集


中小M&Aの実務で使われる用語を、制度の一次出典とJMIのデータに紐づけて整理する。語の意味だけでなく、その数字が市場でどう現れているかまでを扱う。

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JMI Concepts JMIの概念

実効手数料率

じっこうてすうりょうりつ

案件で実際に支払う手数料の総額を譲渡額で除した比率である。料率表の名目値とは異なり、最低手数料の存在により小規模案件ほど上振れする構造を持つ。「5%から」という案内と、実際に支払う率は別物として理解する必要がある。

JMIデータでの扱い

譲渡額5,000万円規模の案件では中央値16.6%。規模が上がるほど料率表(レーマン)に近づく。

リーグテーブル

りーぐてーぶる

複数の機関の実績を共通基準で一覧化した順位表を指す。投資銀行業界で確立した慣行であり、JMIはこれを中小M&A領域に適用した。中小企業庁「M&A支援機関登録制度」の公開データを母集団とし、機関横断での比較を可能にする。

JMIデータでの扱い

2024年度版は成約実績の記録がある829社を対象とする。

成約実績(自己報告ベース)

せいやくじっせき

M&A支援機関登録制度において各機関が中小企業庁に報告する成約件数である。自己申告値であり、第三者による個別検証は行われていない。報告がない機関は「実績ゼロ」ではなく「成約の記録がない(未報告を含む)」と読むのが正確である。

JMIデータでの扱い

登録3,396社のうち2024年度に成約実績の記録があるのは829社。残る2,567社には未報告を含む。

JMIティア

じぇいえむあい・てぃあ

JMIリーグテーブルにおける支援機関の5段階区分である。2024年度の成約実績件数に基づき、Diamond(101件以上)、Platinum(51〜100件)、Gold(11〜50件)、Silver(6〜10件)、Bronze(1〜5件)に区分する。区分はデータのみで決定され、JMIへの対価によって変動することはない。

JMIデータでの扱い

2024年度はDiamond 6社、Platinum 8社、Gold 91社、Silver 76社、Bronze 648社。

Institutions 制度

M&A支援機関登録制度

えむあんどえー・しえんきかん・とうろくせいど

中小企業庁が2021年に創設した、仲介業者・FA等のM&A支援機関の登録制度である。登録機関は中小M&Aガイドラインの遵守を宣言し、成約実績等を報告する。事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)の対象は登録機関の支援に限られる。

JMIデータでの扱い

JMIリーグテーブルの母集団そのものであり、2026年4月10日取得時点で3,396社が登録されている。

M&Aアドバイザー認定制度(仮称)

えむあんどえー・あどばいざー・にんていせいど

中小企業庁が2026年度の創設に向けて検討している、M&A支援人材の資格認定制度である。2026年3月の検討会で試験設計の詳細が公表され、CBT方式・4科目(M&A実務/財務・税務/法務/倫理・行動規範)の構成が示された。倫理・行動規範が配点・科目別最低基準・禁忌肢の三重で重視されている点に特徴がある。

JMIデータでの扱い

JMIは公表された出題範囲(現状案)42中項目に準拠した演習を公開している。

中小M&Aガイドライン

ちゅうしょう・えむあんどえー・がいどらいん

中小企業庁が定める、中小M&Aの当事者と支援機関に向けた行動指針である。手数料の事前説明、利益相反への対応、広告・営業の規律などを定め、登録制度の遵守基準として機能する。現行は第3版。

事業承継ガイドライン

じぎょうしょうけい・がいどらいん

中小企業庁が定める事業承継の進め方の指針である。承継準備の必要性認識から実行までの5ステップを示し、親族内承継・従業員承継・第三者承継(M&A)の3類型を整理する。現行は第3版。

事業承継・引継ぎ支援センター

じぎょうしょうけい・ひきつぎ・しえんせんたー

全47都道府県に設置された公的な事業承継の相談窓口である。国の委託事業として運営され、無料で相談できる。民間支援機関への橋渡しや、後継者不在企業と譲受希望者のマッチングも担う。

Fees & Contracts 手数料・契約

オーナー受取額レーマン

おーなー・うけとりがく・れーまん

株式対価に役員退職慰労金などオーナーが受け取る金額を加えた総額を基準とするレーマン方式である。退職金スキームを併用する中小M&Aの実態に即した基準といえる。

JMIデータでの扱い

FA契約の19%が採用。

株価レーマン(株式価値基準)

かぶか・れーまん

株式の譲渡対価を基準額とするレーマン方式である。4類型の中で基準額が最も小さくなりやすく、名目料率が同じでも報酬総額は相対的に低い。

JMIデータでの扱い

FA契約の42%が採用し、4類型で最多。M&A専門業者で主流。

企業価値レーマン

きぎょうかち・れーまん

株式価値に有利子負債を加えた企業価値(EV)を基準とするレーマン方式である。

JMIデータでの扱い

FA契約の8%が採用。コンサルティング系で比率が高い。

着手金・中間金・月額報酬

ちゃくしゅきん・ちゅうかんきん・げつがくほうしゅう

成功報酬以外に発生しうる費用の3類型である。着手金は契約時、中間金は基本合意時、月額報酬(リテイナー)は契約期間中に発生する。「完全成功報酬」はこれらを取らない体系を指す。初期費用の有無は機関選定の重要な比較軸となる。

JMIデータでの扱い

成約実績829社のうち着手金ありは40.7%、中間金ありは30.3%。リーグテーブル詳細パネルで機関ごとに確認できる。

最低手数料

さいてい・てすうりょう

成功報酬の下限として設定される金額である。案件規模が小さい場合、レーマン計算値ではなく最低手数料が適用されるため、小規模案件の実効手数料率を押し上げる主因となる。

JMIデータでの扱い

開示829社ベースで中央値500万円。機関種別では税理士200万円台から仲介専門・地銀1,000万円、その他金融2,000万円まで開きがある。

専任条項

せんにん・じょうこう

仲介・FA契約において、他の支援機関への並行依頼を制限する条項である。中小M&Aガイドラインは、専任条項を設ける場合の説明義務や契約期間の限定など、依頼者保護の観点からの規律を示している。

移動総資産レーマン

いどう・そうしさん・れーまん

株式価値に負債総額を加えた移動総資産を基準とするレーマン方式である。4類型の中で基準額が最も大きくなり、同じ料率表でも報酬総額は最大になる。

JMIデータでの扱い

地方銀行60行のうち39行(65%)が採用し、株価基準が主流の専門業者と対照的な分布を示す。

レーマン方式

れーまん・ほうしき

成功報酬を「基準額×逓減する料率」で算定する方式である。基準額が大きいほど適用料率が下がる段階テーブルを用いる。単一の計算式ではなく、基準額の取り方に4つの類型があり、同一案件でも採用基準により報酬額は大きく変わる。

JMIデータでの扱い

登録829社の約88%がレーマン系の報酬体系を採用。基準額の選択により成功報酬は最大1.9倍動く。

Process & Valuation プロセス・評価

EV/EBITDA倍率

いーぶい・いーびっとだ・ばいりつ

企業価値(EV)がEBITDA(償却前営業利益)の何倍かを示す評価指標である。M&Aの値決めで参照される代表的なマルチプルであり、業種により水準が大きく異なる。

JMIデータでの扱い

業種別の倍率データをインサイトで整理している。単一の中央値で個別案件を測ることはできない。

PMI(経営統合)

ぴー・えむ・あい

Post Merger Integrationの略で、成約後の経営統合プロセスを指す。実態としては成約後に始めるものではなく、成約前の検討段階から設計するものである。中小企業庁は中小PMIガイドラインで100日プラン等の枠組みを示している。

JMIデータでの扱い

PMI支援を表明する機関は829社の41.3%。リーグテーブル詳細パネルで機関ごとの対応有無を確認できる。

仲介とFA

ちゅうかい・と・えふえー

中小M&Aにおける支援機関の2つの関与形態である。仲介は譲渡側・譲受側の双方と契約して取引成立を支援し、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)は一方の当事者とのみ契約してその利益のために助言する。報酬構造と利益相反の構造が根本的に異なる。

年買法(年倍法)

ねんばい・ほう

時価純資産に営業利益の数年分(慣行的に2〜5年)を加えて譲渡額の目安とする、中小M&Aで広く用いられる簡便な評価法である。理論的な評価法ではないが、当事者の納得形成に使われる実務慣行として定着している。

両手取引と利益相反

りょうて・とりひき・と・りえきそうはん

仲介者が譲渡側・譲受側の双方から手数料を受領する取引構造を両手取引と呼ぶ。双方の利益を同時に最大化することは構造上できないため、利益相反の管理が制度上の論点となる。中小M&Aガイドラインは仲介者に利益相反リスクの説明義務を課している。

For Owners 経営者の基礎用語

企業概要書(IM)・ノンネームシート

きぎょうがいようしょ/のんねーむしーと

譲渡企業を譲受候補に紹介する2段階の資料である。ノンネームシートは社名を伏せた匿名の打診資料、企業概要書(IM)は秘密保持契約締結後に開示される詳細資料を指す。

意向表明書(LOI)

いこうひょうめいしょ

譲受候補が譲渡側に対し、想定価格や条件、スキームを示す書面である。原則として法的拘束力を持たないが、以後の交渉の出発点となる。複数候補から意向表明を受けて比較する進め方もある。

株式譲渡

かぶしき・じょうと

会社の株式を譲受側に売却し、経営権を移転する手法である。会社の法人格・契約・許認可・従業員の雇用がそのまま維持されるため、中小M&Aで最も多く用いられる。

会社分割

かいしゃ・ぶんかつ

会社の事業に関する権利義務を包括的に他の会社へ承継させる組織再編の手法である。事業譲渡と異なり個別の移転手続を要しない一方、債権者保護手続等の法定手続が必要となる。

キーマン条項

きーまん・じょうこう

譲渡後の一定期間、経営者など特定人物の引継ぎ関与を義務づける契約条項である。ロックアップとも呼ぶ。引継ぎの実効性を担保する一方、譲渡側経営者の拘束期間として交渉上の論点となる。

クロージング

くろーじんぐ

最終契約に基づき、株式等の引渡しと対価の決済を実行する手続である。クロージングをもって経営権が移転し、以後はPMIの局面に入る。

事業譲渡

じぎょう・じょうと

会社の事業の全部または一部を選択して譲渡する手法である。譲渡対象を特定できる柔軟性がある一方、契約・許認可・雇用は個別に移転手続が必要となる。会社に残す資産・事業がある場合や、一部門のみ承継する場合に用いられる。

最終契約(SPA)

さいしゅうけいやく

株式譲渡契約をはじめとする、取引の確定条件を定める契約である。譲渡価格、表明保証、補償、クロージングの前提条件などを規定する。基本合意と異なり全体が法的拘束力を持つ。

デューデリジェンス(DD)

でゅー・でりじぇんす

譲受側が譲渡企業の実態を調査する手続である。財務・税務・法務・ビジネス等の領域ごとに専門家が実施する。発見事項は最終的な価格や契約条件(表明保証・補償)に反映される。買収監査とも呼ぶ。

のれん

のれん

買収対価が譲渡企業の純資産を上回る差額である。技術・顧客基盤・ブランドなど帳簿に載らない価値の対価と説明される。譲受側の会計上は資産計上され、償却または減損の対象となる。

基本合意書

きほん・ごういしょ

主要条件について当事者間の合意を確認する中間的な契約である。価格等の条件は拘束力を持たないことが多いが、独占交渉権や秘密保持などの条項には拘束力を持たせるのが通例である。締結後にデューデリジェンスへ進む。

表明保証

ひょうめい・ほしょう

譲渡側が、財務内容や法令遵守の状況など一定の事実が真実であることを表明し保証する契約条項である。違反が判明した場合、譲受側は補償を請求できる。DDで開示した事項との整合が実務上の焦点となる。

Last updated: 2026.06.15

本用語集は中小企業庁の公開資料および中小M&Aガイドライン等に基づきJMI編集部が整理したものである。「JMIデータでの扱い」に示す数値は、特記なき限りJMIリーグテーブル2024年度版(成約実績829社)に基づく。制度の記述は一次資料を出典とし、改訂時に更新する。